性感染症とは
性行為で粘膜や皮膚に触れあうことで、感染する疾患です。感染する可能性がある性行為には、オーラルセックスやアナルセックスも該当します。同じ疾患でも、男女で症状の現れ方が異なるケースが多いので、ご自分の感染が分かりましたら、パートナーも検査を受ける必要があります。
また、性感染症の中には、自覚症状に乏しいものもあります。無症状のまま進行すると、不妊症のリスクが上昇するだけではなく、母子感染を引き起こす危険性もあります。性感染症は「うつさない」「広げない」対策が大事です。心当たりがありましたら、速やかに受診しましょう。
性感染症の症状は主に泌尿器に発症するため、男性は泌尿器科を、女性は婦人科へ受診しましょう。
こんな症状がありましたら病院へ
以下の症状がありましたら、放置せずに受診してください。
また、性感染症ではない場合でも、泌尿器疾患である可能性もあります。
- 外陰部がかゆい、痛い
- できもの、しこり、水疱
- 排尿時のかゆみ、違和感 など
オンライン診療を行っております
当院では性感染症のお悩みに対してオンライン診療を開始いたしました。
- 病院が遠くて中々通院できない
- 仕事や学校が忙しくて受診する時間がない
- コロナが心配で病院に行くのが不安
というお悩みをお持ちの方はお気軽にオンライン診療をご利用ください。
感染する前に受診を
性感染症は、「不特定多数との性行為」や「コンドームをつけない性行為」を行うと、発症リスクが上昇します。また、過労や睡眠不足で免疫力が低下したり、慢性疾患を持っていたりする場合も、感染する可能性が高まります。
性感染症は、パートナーに感染してしまう可能性のある疾患です。「かかったかも」「うつしてしまったかも」と思いましたら、早めに受診しましょう。
主な性感染症
急性尿道炎
尿道に炎症が発生する性感染症で、淋菌やクラミジアによる感染が多いです。オーラルセックスでも感染するため、風俗をきっかけに感染するケースが増加傾向にあります。口や手だけを用いる性行為でも、しっかりコンドームをつけましょう。
パートナーに淋菌やクラミジアをうつし、無症状のまま進行してしまうと、将来の不妊症や子宮外妊娠、母子感染などのリスクが上昇します。些細な体調変化も見逃さずに、気になる症状がありましたら受診しましょう。また、無症状の場合でもパートナーの受診が必須です。
淋菌やクラミジアは重複感染したケースが多々あるため、症状がある場合は、淋菌とクラミジア両方の検査を受けましょう。
淋菌性尿道炎
性行為した後、潜伏期間の2~7日を経てから発症する性感染症です。男性が感染すると強い排尿痛や、黄色っぽい膿などの症状が引き起こされます。放置すると前立腺の炎症も起きてしまい、尿道狭窄や男性不妊症のリスクが高まります。
当院では、尿検査でも感染確認することが可能です。また、一緒にクラミジアの感染の有無もお調べできます。淋菌性尿道炎は抗生物質による治療で治しますが、近年では薬剤耐性を持つ淋菌が増えてきているため、当院では注射剤を用いて治療します。
クラミジア尿道炎
性行為した後、潜伏期間の1~3週間程度経過してから発症する性感染症です。潜伏期間が比較的長いうえに、軽めの症状しか現れません。そのため、近年では感染者数が増加傾向にあります。白っぽい分泌液や軽い排尿痛、かゆみなどの症状が見られ、軽い違和感や無症状のケースも少なくありません。
稀に睾丸が腫れる精巣上体炎や、急性前立腺炎を併発することがあり、放置すると男性不妊症の原因になります。また、女性に感染すると、不妊症や子宮外妊娠、母子感染のリスクが上昇します。パートナーとうつしあってしまうことが多いため、二人同時に治療することが重要です。
診察では問診した後に、尿検査でクラミジア感染の有無を確認することが可能です。治療は抗菌剤の内服を2週間継続するか、ジスロマックの1回投与のどちらかを行います。
尖圭コンジローマ
ヒトパピローマウイルスに感染することで、性器や肛門の周辺にイボが発生する性感染症です。性行為してから1~6ヶ月の潜伏期間を経て、発症する傾向にあります。
子宮頸がんの原因となる高リスクタイプのヒトパピローマウイルスとは異なりますが、同時感染していることもあるため用心しましょう。軟膏などで治療しても治らないこともあるため、液体窒素による冷凍凝固や、レーザー治療でイボを取り除きます。
性器クラミジア感染症
クラミジア・トラコマティスという細菌が原因で発症する性感染症です。若年層の感染者が多く、放置すると不妊や母子感染リスクが高まるため、注意しましょう。オーラルセックスによってのどに感染し、さらにのどから性器へ感染するケースも少なくありません。
男性は尿道に感染してクラミジア性尿道炎を起こしますが、女性は子宮頚管に感染します。男性の場合は尿検査で感染の確認ができますが、女性の場合は尿検査での確認ができないので、婦人科への受診を推奨します。
梅毒
梅毒トレポネーマという細菌に感染する性感染症です。梅毒は進行するごとに特徴的な症状が現れますが。無症状の期間もあるので、注意が必要です。梅毒は1~4期の段階で進行します。
第1期は感染した部位に小さな硬いしこり(痛みはなく、陰部にできやすい)が現れ、次にリンパ節の腫れが生じます。このような症状は2~3週間程度で消えます。3ヵ月ほど経過すると2期に入り、発疹、ピンク・赤の斑点、脱毛、膿といった症状が現れます。しかし、症状は3年程度で消えてしまいます。
梅毒は現在、ペニシリン系の抗生物質で完治できるようになったため、多くの梅毒は2期までの状態で治療され、これ以降の症状が見られることはほぼありません。3・4期には梅毒特有の腫瘍である「ゴム腫」が身体の表面、肝臓、睾丸、大動脈などに発生し、最終的には脳や神経などの障害を起こし、死に至ります。
抗生物質の投与は、4週間ほど継続する必要があります。
淋病
淋菌の感染によって起こる性感染症です。しかし、近年では薬剤耐性のついた淋菌が増加傾向にあるため、根気よく治療を継続することが大事です。オーラルセックスによって、のどに感染するケースもあります。
淋病は、1回の性行為で感染する確率が20~50%もあり、クラミジアと同時感染することも少なくありません。そのため、淋病とクラミジアの両方の検査を受けることを推奨します。男性は尿道に感染して菌性尿道炎を発症し、膿のような分泌物が出たり、激しい排尿痛を起こしたりします。女性は子宮頚管炎を発症することが多いのですが、無症状のケースも多いです。
男性は尿検査で感染の有無が分かりますが、女性は子宮頚管の分泌物を採取する生検が必要なので、婦人科へ受診してください。
性器ヘルペス
単純ヘルペスウイルスの感染によって発症し、水疱や潰瘍といった症状を引き起こす疾患です。治ってもウイルスが神経節に潜伏してしまうため根治は難しく、疲れやストレスなどによる免疫力低下で再発を繰り返すこともあります。
無症状でもウイルスをうつしていることが多いので、知らず知らずのうちにパートナーへ感染させてしまう恐れがあります。初感染時の症状は比較的重く、発熱やリンパ節の腫れ、激しい痛みなどを引き起こします。
症状がひどい場合には抗ウイルス薬の服用を、軽度の場合は軟膏で治療します。また、迅速診断キットでの判定もできます。
パートナーの受診・治療も必要
性感染症の治療と予防は、ご自身とパートナーの未来を守るためにも欠かせません。多くの性感染症は、コンドームを適切に使うことで予防できます。オーラルセックスやアナルセックスでも、コンドームは絶対につけましょう。
性感染症は誰でもかかる可能性のある疾患です。「大丈夫かな」と不安になった場合は、極力早めに受診しましょう。さらに、性感染症の感染が分かりましたら、医師が完治したと言うまで、しっかり治療を継続しましょう。
また、無症状の場合でも、将来の不妊や子宮外妊娠、母子感染などのリスクがあるので、絶対に検査を受けてください。中には梅毒のように、進行すると命に関わる疾患や、がん発症のリスクを上昇させる疾患もあります。
ご自身とパートナーの未来を守るためにも、心当たりがありましたら速やかにご相談ください。
ブライダルチェックとは
「ブライダルチェック」と聞きますと、「結婚を予定している女性が受ける婦人科検診」というイメージを抱く方もいるのではないでしょうか。現在では、男性版ブライダルチェックをご希望される方もだんだん増えてきています。
当院での男性向けブライダルチェックでは、前立腺疾患や性感染症などの有無や、泌尿器に関する問題の有無を確認します。プロポーズ前の準備に、結婚相手ができた際に、ぜひ受診されることを推奨します。