前立腺の疾患とは?
膀胱のすぐ下にある、クルミぐらいの大きさの臓器を「前立腺」といい、排尿のコントロールに関係している部位です。
前立腺は精嚢(せいのう)と一緒に、精液を生成する役割を担っていて、真ん中には尿道が通っています。前立腺に関する疾患は「前立腺肥大症」が代表的です。
前立腺肥大症
多くの男性は加齢に伴い、尿が出にくくなります。尿が出にくくなる原因で、一番多いのが「前立腺肥大症」です。前立腺が肥大化すると尿道の圧迫が生じ、尿が出にくくなるといった排尿障害が引き起こされます。
前立腺肥大症による排尿障害を長期間放置すると、肥大化が進み、膀胱にたまる尿量が増え、感染症や腎不全などの発症リスクが高まります。勝手な自己判断はせずに、泌尿器科へ相談しましょう。
症状
前立腺肥大症には、排尿症状、畜尿症状、排尿後症状があります。
排尿症状
- 排尿困難
- 尿の勢いが弱い
- 尿を出したくてもなかなか出ない
- 尿が途切れる
- 力を入れないと尿が出ない
- 尿線が分かれる
畜尿症状
- 昼間頻尿
(朝起きてから寝るまでにおおむね8回以上の排尿) - 夜間頻尿
(就寝後1回以上、排尿のために起きる) - 尿意切迫感
(我慢できないような強い尿意) - 切迫性尿失禁
(尿意切迫感があり、トイレまで我慢できず漏れてしまう)
排尿後症状
- 残尿感
(排尿後、すっきりしない) - 排尿後尿滴下
(排尿が終わったと思ったのに、尿が漏れてしまう)
診断と検査
問診時では、排尿障害の原因となる疾患や、その他疾患の有無、既往歴をお伺いします。そして、以下の検査を実施し、総合的に診断を下します。
IPSS(国際前立腺症状スコア)
自覚症状の程度を計算するテストです。10点以上出た方は、泌尿器科への受診を推奨します。
尿流量測定(ウロフローメトリー)
専用の測定装置に向かって排尿することで、尿の勢いや、排尿にかかる時間を調べます。尿流量が数値とグラフで分かるため、排尿障害の程度がすぐに確認できます。前立腺肥大症を診断する場合には、症状の進行度や、前立腺がんのような他疾患の併発の有無を確認することが重要です。
超音波検査
前立腺の大きさや形状、膀胱に残っている残尿量などを調べます。
血液検査(前立腺腫瘍マーカー PSAなど)/尿検査
血液検査を行うことで、腎機能障害や前立腺がんの有無が分かります。尿検査では前立腺をはじめ、他臓器の異常の有無も確認します。
治療
薬物療法を中心に行います。処方する薬剤は、前立腺肥大症による排尿障害が起こる原因によって異なります。尿道圧迫の原因が前立腺の平滑筋収縮である場合は、平滑筋を弛緩させる薬剤を、肥大した前立腺が尿道圧迫の原因である場合は、男性ホルモンの作用を抑制させ、前立腺を小さくする薬剤を処方します。
薬物療法で改善できるケースが多いのですが、症状が改善されない場合は、手術を検討します。手術は、「尿道から内視鏡スコープを入れて、電気メスで前立腺を切除する手術法」と、「レーザーで前立腺を切除する手術法」があります。