このような症状はありませんか?
- 突然トイレに行きたくなり、尿意を我慢するのが難しい
- 水分をたくさん摂取していないのにも関わらず、トイレが近くなる
- 咳やくしゃみなどでお腹に力が入った瞬間、漏らしてしまうことがある
過活動膀胱、神経因性膀胱に対する
ボツリヌス療法
当院では、神経因性膀胱と難治性過活動膀胱に対する治療として、「ボツリヌス毒素膀胱壁内注射療法」を始めました。
過活動膀胱は、切迫性尿失禁をはじめ、頻尿や尿意切迫感などの症状が現れる疾患です。日本では、40歳以上の約12%が過活動膀胱の症状を持っていると言われています。過活動膀胱は主に、内服薬を用いる薬物療法で治療を行います。
しかし薬物療法は、口の渇きや便秘などの副作用が現れたり、症状が改善できなかったりする問題がありました。 そこで当院は、薬物治療での症状改善が難しい過活動膀胱に対して、「ボツリヌス膀胱壁内注入治療」を導入することになりました。
「ボツリヌス膀胱壁内注入治療」は2020年の4月から保険適応となった、頻尿・尿失禁の新しい治療法です。 日帰りでの治療が可能というメリットに加え、一度注射を打つだけで約6~9ヶ月の治療効果が得られます。また、効果が弱くなった場合でも、最後に打った日から3ヶ月以上経過した後に、再投与することが可能です。
過活動膀胱とは?
過活動膀胱とは、膀胱に尿を貯めることに支障をきたす疾患です。
具体的な症状として、「トイレが近くなる」「突然我慢できない程の尿意を覚える」「突然尿意を催し、我慢できず漏らしてしまう」などがあります。近年の調査によりますと、過活動膀胱に悩む患者様の数は多いことが判明されています。
- 突然強い尿意を覚え、漏れそうになって我慢が難しくなる(尿意切迫感)
- 尿の回数が多くなる(頻尿)、夜中に何度もトイレに行きたくなって目が覚める(夜間頻尿)
健康な人の場合、排尿回数は日中で5~7回、寝ている間では0回だと言われています。日中8回以上の排尿がある、夜間で1回以上トイレに行きたくなって目が覚める状態がありましたら、頻尿・夜間頻尿に当てはまります。 - 突然尿意を覚え、トイレまで我慢できずに漏らしてしまう(切迫性尿失禁)
ボツリヌス療法の適応となる方
現在行っている治療法では症状を改善させることが難しい、または薬などの副作用が心配な難治性過活動膀胱の患者様で、かつ「残尿量が 100ml 以下」である患者様を対象にしております。
また、もし自力での排尿が難しくなった時のために、ご自身で(または同居されているご家族の方)で導尿ができることが必要です。
ボツリヌス療法の特徴
ボツリヌス療法を受けるにあたって、入院する必要はありません。
副作用は主に、尿路感染症や残尿量の増加、尿閉があります。一度ボツリヌス療法を受けると、約8 カ月間効果が持続します。それ以上の期間が経つと効果は徐々に弱まっていくため、効果を維持させるには「1 年に 1~2 回程度の注射」が必要です。
また、ごく稀な事例として、何度も注射し続けると抗体が体内につくられ、効果が得にくくなるケースがあります。 その他の注意事項ですが、女性は注射から2 回目の生理が終わるまで、男性は注射から 3 カ月以上経つまでの間、避妊をする必要があります。
ボツリヌス療法の流れ
Step1検査と治療についての説明、同意書の記入
治療前には、尿検査や採血、残尿量の測定などの検査を行います。検査結果から「治療対象になる」と判断されましたら、ボツリヌス療法の説明を行います。その後に、治療同意書への記入を行っていただきます。
Step2治療当日
尿道から管を通し、膀胱に局所麻酔を行います。15 分ほど休んでいただいてから、内視鏡を膀胱内へ入れていきます。膀胱の筋肉内へ、細い針を使って約20~30箇所にボツリヌス注射液を注射します。注射は15 分前後で終わります。
注射後は休憩室で30 分〜1 時間、経過観察を行い、排尿状況や血尿の程度を調べます。医師が問題ないと判断してから、ご帰宅いただけます。
Step3治療後の診察
注射から 1〜2 週間後は、残尿測定などを行うため再診していただきます。問題がなければその後は 1〜3カ月に一度の頻度で、受診していただいて経過観察を行います。
治療効果について
国内での臨床試験結果によりますと、過去に尿失禁をしていた回数から半分まで減少できた方の割合は約6割、尿失禁が減少できた回数は平均で3.24回、尿失禁が完治できた方の割合は約 2割でした。
また、尿意切迫感が減少できた回数は、6 週目平均で3.32回でした。排尿回数は、6週目に1.78 回減っていることから、難治性過活動膀胱の患者様に対しての症状改善に期待できる治療法だと分かります。ボツリヌス療法は、難治性過活動膀胱を抱える患者様の症状を落ち着かせる治療法として、期待できるものです。
過活動膀胱は、頻尿や尿意切迫感、切迫性尿失禁のように、QOL(生活の質)の低下を招く症状が起こりますが、医師への相談をためらって我慢してしまう方が少なくありません。 近年では、薬物療法や行動療法以外の治療法が徐々に増えてきています。些細なお悩みでも、まずはお気軽にご相談ください。
副作用について
治療後に、下記のような副作用が現れた臨床結果が報告されています。
血尿(約2%)
膀胱内に注射をするため、血尿が出ることがあります。しかし、多くの場合は一時的な血尿で済みます。
尿路感染症(約5%)
尿の出口から細菌が侵入することで、膀胱炎や前立腺炎、腎盂腎炎などの尿路感染が起こってしまうことがあります。
排尿困難、残尿の増加、尿閉(約5〜9%)
尿が溜まったり、出し切れなかったりすることがあります。残尿量によっては、カテーテルを使った自己導尿で排尿していただくこともあります。
アレルギー(1%以下)
発疹や蕁麻疹、吐き気などのアレルギー症状が起きる場合があります。
治療後に副作用が現れた際は、放置せずにお問い合わせください。
治療費用
ボツリヌス毒素膀胱壁注入療法 | 健康保険適用で3割負担の場合 約6万円 / 1回 |
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